2011年3月の東日本大震災から約1年の間に、全国の市区町村が都道府県境を越えて新たに締結した災害時応援協定は、総務省消防庁がまとめた「地方防災行政の現況」によると、岐阜が15件で全国2位だったことが23日までに分かった。県内自治体の高い防災意識に加え、日本の中央に位置する内陸県の役割が増しているといえそうだ。
◆防災意識向上 「海なし」岐阜県2位
 震災で11年分のデータがない福島、岩手、宮城の被災3県を除いた1位は静岡の33件で、長野と北海道が岐阜と並んで2位。震災を受けて自治体間の広域的な防災連携の必要性が叫ばれる中、原子力発電所が立地し、長い海岸部を抱える静岡や北海道に混じって、「海なし県」の岐阜や長野が上位に入った。
 協定の増加数は、岐阜など4道県に続き、千葉が14件、愛知と大阪が13件、鹿児島12件、三重10件、福井と秋田が9件。東海3県はいずれも増加数が多く、奈良と鳥取はゼロだった。12年4月時点での協定締結数は、1位が東京の160件、2位は長野の103件。静岡94件、埼玉87件、神奈川79件、岐阜68件、愛知と福島63件、千葉と新潟が61件で続く。
 県防災課などによると震災後、県内で最も多く協定を結んだのは大垣市で5件。次いで多治見市4件、関市3件だった。同課は「震災後に増えたのは、県内市町村の防災意識の高まりを示す数字」と認識。内陸県の立地が協定先として評価されているとは言い切れないとしながらも「岐阜も長野も津波の恐れがないのはメリット。日本の中心に位置するため、東西両地域に近いことも協定が増えた理由ではないか」とみている。「地方防災行政の現況」は、同庁が地方自治体などから提供を受けた4月1日現在の状況を年に一度集計、翌年に公開している。

 東日本大震災以降、都道府県境を越えた市町村間の広域的な災害時応援協定締結数が、全国で2番目に多かった岐阜県。各市町の締結相手は、友好都市や加盟する各種サミット、歴史的な関係や共通する特産品を有する自治体が多い。応援協定締結は、自治体同士が互いの絆を確かめ合う意味もあるようだ。
◆藩主が交流・奥の細道・刃物…
 静岡県掛川市伊豆市と相次いで協定を結んだ恵那市。2011年の調印式で松井三郎掛川市長は、東海地震を念頭に「津波原子力災害の危険を感じている中、内陸県は避難先としてありがたい」と語った。恵那市岩村藩の長い歴史を持ち、江戸時代に藩主同士が姻戚関係だった掛川市とは、今も地域イベントで交流を続ける仲。伊豆市も同じだ。恵那市防災課は「普段から行き来のある市は互いに地理を熟知している分、いざという時に駆け付けやすい。歴史や観光交流との相乗効果も期待できる」と話す。
 松尾芭蕉の「奥の細道」を縁に協定が進んだのは大垣市。始まりの地である東京都荒川区と、史跡「芭蕉衣掛の松」がある宮城県栗原市からの提案を受け入れた。大垣市は協定をきっかけに、両区市とのイベント交流を広げる予定。また、薩摩義士による木曽三川の治水工事が縁で友好関係がある鹿児島市とも協定を交わした。関係者は「自治体の規模に差がある鹿児島市とは本来なら締結できる相手ではない」と歴史の縁に感謝する。
関市は刃物を共通の特産とする新潟県三条市福井県越前市と協定。多治見市は中部環境先進5市サミットの加盟市と結んだ。
 各市担当者は「混乱が予想される被災直後に、応援要請先を迷わないで済む」と口をそろえる。一方で津波被害が懸念される地域ばかりとの協定にはバランス面を不安視する声もある。しかし県担当者は「単純に立地だけで考えるべきでない。高度な防災・救助技術を持っている静岡県などは十分に組むべき相手」と話し、ある市の担当者も「派遣先の被災地での経験が防災に役立てられる」と頼もしい。支え合いの心を強調する可知義明恵那市長は言う。「協定はまず広い心で取り組むべき。今の日本に安全なところなどないのだから」

両記事では,岐阜県に位置する市町村における災害時応援協定の締結状況を紹介.
第1記事では,同記事内でも紹介されている消防庁による「地方防災行政の現況」*1の結果,2011年度から増加件数では,岐阜県に位置する市町村が「全国2位」であったことを報道.ただし,現在同庁HPに掲載されている「地方防災行政の現況」内の「調査結果表2−9市区町村の応援援助協定の状況(その1)」」*2は,2012年4月1日現在の状況.そのため,本記事のように,経年の増減を確認するためには,前年度の「地方防災行政の現況」と突合が必要.要確認.
第2記事では,応援協定を締結する自治体間での背景を報道.具体的には,「友好都市や加盟する各種サミット,歴史的な関係や共通する特産品を有する自治体が多い」という.なるほど,平常時での「潤滑剤」として関係性が,災害時での「強力接着剤」*3としての関係性ともなるということだろうか.興味深い.

*1:消防庁HP(消防防災)「地方防災行政の現況

*2:消防庁HP(消防防災地方防災行政の現況)「調査結果の概要」75頁

*3:ロバート・パットナム『孤独なボウリング』(柏書房,2006年)20頁

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生