自治体が、老朽化した公共施設の土地を銀行に信託し、土地の一部を売却し施設の建て替え費用をまかなう手法が注目されている。りそな銀行は昨年、東京都武蔵村山市のし尿処理施設の建て替えで、同市などと信託契約を結んだ。建設業者選定など土地活用を一括して銀行側に任せることで費用を大幅に減らせるため、他の自治体からも問い合わせが相次いでいる。高度成長期の1960年代に整備された公共施設の多くは老朽化で建て替え時期を迎えており、財政難の自治体にとって解決策の一つとして期待が高まりそうだ。
 りそな銀が受託して建て替えを進めているのは、61年に建設されたし尿処理施設。下水道の整備が進んだため、処理量は建設当時の100分の1以下に減り、大半の施設が未稼働となっていた。このため、新施設を小型化することにし、7万4000平方メートルの敷地のうち余った4万4000平方メートルを宅地として造成した上で住宅メーカーに売却。約34億円の売却益から、解体と新施設建設の費用約28億円を業者に支払い、残りは自治体に還元する計画だ。りそな銀は一部を手数料として受け取る仕組みで、自治体側の費用負担は手数料だけで済む。みずほ信託銀行も同様の手法で宮城県から東京職員宿舎(千葉県)の建て替えを受託するなど、徐々に導入が進んでいる。
 自治体が自ら土地の一部を売却して建て替え費用を工面しようとしても、古い施設の解体費用がかかるため、進まないケースが多い。また、土地の売却や新施設建設を行う度に議会の承認が必要だが、信託事業として一括で承認を得れば事業期間も短縮できる。ただ、土地の売却益で建て替え費用をまかなえるのは地価の高い都市部に限られるなど、課題も多い。りそな銀公共法人部の野村明洋マネジャーは「それぞれの自治体が抱える課題に沿った提案を地道に行うことで、この仕組みを広げたい」と話す。
 総務省が2013年に全国の自治体を対象に行ったアンケート調査によると、解体・撤去したい公共施設数は1万2251件に上る。防犯や防災の観点からも早期の建て替えが求められるが、自治体の予算不足で進んでおらず、各行は土地信託のニーズが増えるとみて、指定金融機関となっている自治体を中心にメリットをアピールする考えだ。【鈴木一也】

本記事では,武蔵村山市における土地活用の取組を紹介.同取組に関しては,同行HPを参照*1
同取組では「土地信託を活用した老朽インフラの更新事業」.同市の「施設更新事業」において「更新する施設を小型化」sることで「余った土地を売却」*2を行い,これにより資金面では「資金負担を軽減することが可能」*3となる.くわえて手続面では「信託の活用」の「事業全体を一括で議会に承認」することで,「事業期間の短縮にもつなが」*4るとも紹介されており,「膨大な調整」*5への軽減も想定されている模様.今後の活用状況は,要観察.

*1:りそなホールディングスHP(CSRへの取組みCSR活動報告コミュニティ)「地域との連携

*2:前掲注1・りそなホールディングス(地域との連携)

*3:前掲注1・りそなホールディングス(地域との連携)

*4:前掲注1・りそなホールディングス(地域との連携)

*5:小島卓弥「なぜ公共施設改革・ファシリティマネジメントが必要か」小島卓弥編著『ここまでできる実践公共ファシリティマネジメント』(学陽書房,2014年)21頁

ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント

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