認知症高齢者、無料で保険に 東京・葛飾、事故に備え (日本経済新聞2019年2月7日)
 

 東京都葛飾区は認知症の高齢者を対象に、無料で損害保険に加入してもらう事業を始める。徘徊(はいかい)で鉄道事故を起こし、鉄道事業者から家族に多額の賠償を請求されるケースに備える。万一の事態に備え、家族の不安・負担を減らしたい考えだ。

 2019年度予算案に盛り込んだ。対象は区の見まもり事業に登録する、徘徊のおそれのある高齢者。18年末で244人が登録しているが、20年3月末には540人に増える見通し。区は年間で約125万円を保険会社に支払う。本人や家族などの負担はない。

 加入する保険の補償内容は線路に立ち入って電車を止め、列車の運休を引き起こして営業損害が発生した場合に最大5億円。車道への飛び出しによる交通事故などで、本人の死亡や後遺症が発生した場合に最大50万円など。

 葛飾区内では徘徊高齢者を保護するケースが17年に632件、18年で714件発生している。徘徊による事故や、それに伴う損害賠償責任を家族が負うことが増えかねない。区では残された家族の経済的・精神的負担を軽減したいとしている。

 青木克徳区長は「認知症になっても安心して外出できるための一助になれば」と期待する。併せて認知症の早期発見に予防検診の対象を、これまでの68~72歳に75歳を加える。認知症患者は75歳から急激に増えると分析している。

 同様の保険加入の支援については、神戸市、神奈川県大和市、海老名市なども検討・導入している。

本記事では,葛飾区における認知症高齢者徘徊対策の取組を紹介。

同区では「認知症により自宅に戻れなくなる」「あるいは事故等に巻き込まれる恐れのある高齢者等を早期に発見し保護」することを目的に,「認知症による徘徊等に起因する電車の運行不能等による損害賠償責任を補償する」*1事業を,2019年度より開始。「社会環境」が「認知症の人にも使いやすいもの」*2につながる具体的な取組状況は,要確認。

 

*1:葛飾区HP( 区政情報 : 行財政・予算・決算予算 :平成31年度葛飾区予算案概要)「平成31年度葛飾区予算案概要【当初予算案主要事業概要】」(葛飾区,平成31年2月)39〜40頁

*2:徳田雄人『認知症フレンドリー社会』(岩波書店,2018年)52頁

認知症フレンドリー社会 (岩波新書)

認知症フレンドリー社会 (岩波新書)