釜石市は新しい協働の仕組みとして、住民が地域課題や解決策を話し合う「地域会議」を設置する。話し合った結果は市の政策案に反映。政策形成における住民のかかわりを強め、住民主体の地域づくりを進める。市は10日から各地で市政懇談会を開き、協力を呼び掛ける。
 地域会議は市内7カ所にある市生活応援センター内に設置する。構成メンバーは町内会長や市民団体の代表、民生委員らを想定し、各30人ほどを見込む。同センターが事務局を務める。地域課題はこれまで各団体が個別に「道路を整備してほしい」などの要望を市に申し入れ、市が対応を検討していた。地域会議では、話し合った課題や解決策を「地域の意見」として集約。市と協議して最終決定し、市の政策に反映させる。住民が政策決定の一翼を担えるようになるのが特徴。市は10日から7月上旬にかけて、各センターごとに市政懇談会を開催し、制度を説明。栗橋地区と唐丹地区をモデル地区として先行設置し、本年度内に全7カ所に設置したい考えだ。活動資金として当面は、1地域会議に年間25万円の交付金を措置する。地域会議設置は、野田武則市長の公約の1つ。野田市長は「市民に政策形成のプロセスに入ってもらおうということ。地域会議を通して、思いや考えを反映させてほしい」としている。

同記事では,釜石市において,地域市民の政策決定への参加を確保する仕組みとして,市内7ヶ所に各種団体等の代表者から構成される「地域会議」を設けることを紹介.詳細は,同市広報を参照*1.同市の取り組みは,市としての意思決定に至るまでの段階で,各地域毎の意見集約を目的とする,まさに「意見形成」*2に主眼をおいた仕組み.市政における「熟議」の形成には,まずは,これら地域レベルにおける「制度的次元」での具体化があってこそ.同市の取り組みを要観察.
同種の目的を達成するためには,現在であれば,一般制度としての「地域自治区」制度もある.同市で一般制度としての「地域自治区」を採用しないという選択肢を選んだのは何故だろうか.もしかすると,同会議を設ける市生活応援センターの所管区域が,偏在的であり同市の全区域をカバーしていないのだろうか.その場合であれば,一般制度としての「地域自治区」を設けるための区域の点(地方自治法第202条の4第4項)から,同制度を採用しないという理由も分かる.同市の試みは,反射的に一般制度としての「地域自治区」の使い勝手を考えさせられる事例.

*1:釜石市HP「広報かまいし」平成20年6月1日号,2〜3頁

*2:田村哲樹『熟議の理由』(勁草書房,2008年)127〜128頁

熟議の理由―民主主義の政治理論

熟議の理由―民主主義の政治理論