全国で相次いで発覚した高齢者の所在不明問題を受け、大阪府池田市は18日、65歳以上の安否確認調査を毎年実施する条例を制定する方針を明らかにした。
 同居人が調査を拒否しても、市職員が立ち入り調査できる条項を設けるのが特徴で、安否確認の条例化は全国初という。条例の素案などによると、介護保険後期高齢者保険などを1年間利用していない65歳以上の高齢者を、市が毎年名簿化して、民生委員と市社会福祉協議会に提供。年2回程度、高齢者宅を訪問してもらうなどし、安否確認する。対象者は約6500人になるという。
 高齢者宅で異臭がしたり、同居人が拒否したりするなど、緊急性や不審な点がある場合には、民生委員や社協から連絡を受けた市が、職員を派遣して強制的に立ち入り調査できるようにする。名簿の提供は、非常勤特別職の地方公務員である民生委員に対しては現状でもできるが、市社協のボランティアへの提供は、個人情報保護条例に触れる恐れがある。しかし、条例化に伴い、安否確認は市からの委託事業と位置づけ、契約に守秘義務規定を盛り込むことで可能にするという。
 池田市では従来、民生委員の高齢者の見回り対象は75歳以上の希望者のみで、約10%しか希望していない。また8月の調査では90歳以上のうち、4人の安否を把握できていなかったことが明らかになり、市は「日頃から高齢者の安否確認が十分にできていなかった。条例化して態勢を強化する必要がある」と判断。市民から意見を募集したうえで、条例案を12月議会に提案し、来年1月1日から施行する方針。
 総務省住民制度課は「このような条例はないのではないか」とし、厚生労働省事業管理課は「条例による安否確認はありがたい。立ち入りの根拠があることで、より踏み込んだ調査もできるだろう」としている。

本記事では,池田市において,65歳以上の方への安否確認を実施する条例を制定される方針であることを紹介.本記事で紹介されているの同条例の「素案」に関しては,現在のところ,同市HPでは把握できず,残念.
2010年10月19日付の産経新聞による報道では,同条例素案は「「高齢者安否確認に関する条例」(仮称)」との名称により,10月「19日から市民の意見を」募集,「12月定例市議会に提案」,2011「年1月の施行」*1を予定されている模様.まずは,同市HP内の「パブリックコメント・デスク」*2に掲載されるのだろうか.公表後,要確認.
本記事を拝読させて頂くと,「介護保険後期高齢者保険などを1年間利用していない65歳以上」対象として(介護保険後期高齢者以外での「など」は具体的にはどのような制度があるのでしょうか),まずは,同「市が毎年名簿化」され,同名簿を「民生委員と市社会福祉協議会に提供」を行い,民生委員と市社会福祉協議会では,これをもとに「年2回程度」「訪問」する仕組み.上記の産経新聞の報道を併せて拝読させて頂くと,「65〜74歳の名簿」に関しては「市社会福祉協議会へ提供」され,「地区福祉委員1人あたり10人」で「日常的に安否を確認」,「75歳以上」の方については,「民生委員」1に当り「2,3人」を「名簿をもとに」*3確認を行われる,という.加えて,同条例「素案」では,「同居人が拒否」された場合,「緊急性や不審な点がある場合」には,「民生委員や社協」が市へ「連絡」を行い,同市では同市の「職員」を「派遣して強制的に立ち入り調査」を実施される方針.
「「独立的(independent)」な傾向が強い人のほうが」「まわりの人たちと協力する必要性を強く認識する」*4ことで,まずは,民生委員と市社会福祉協議会による訪問を受け入れ,「強制的に立ち入り調査」が実際される状態に至ることは想定され難そう.一方で「孤立(isolation)」された高齢者,そして,その家族等の方々には,「臨検」的な「立ち入り調査」もまた一つの「罰」と想定すれば,訪問を拒否した場合に行わる臨検という「罰」があるという,「罰の警告」*5が提示されることで,まずは,民生委員と社会福祉協議会による訪問を受け入れることも想定されているのだろうか.興味深い.

*1:産経新聞(2010年10月19日付)「市長判断で立ち入り調査 高齢者安否確認へ条例案 大阪・池田

*2:池田市HP(ご意見・お問合わせ)「パブリックコメント・デスク

*3:前掲注1・産経新聞(市長判断で立ち入り調査 高齢者安否確認へ条例案 大阪・池田)

*4:山岸俊男・メアリー.C.ブリントン『リスクに背を向ける日本人』(講談社,2010年)132−133頁

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)

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*5:今井芳昭『影響力』(光文社,2010年)48頁

影響力  その効果と威力 (光文社新書)

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